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2011年05月08日 そんなに生肉、食べたい? [食文化論]

2011年05月08日 そんなに生肉、食べたい?
5月8日(日)

あちこちネットを見ていると、肉の生食への欲求が強いことに驚く。

「ユッケ、食わせろ ウォ~ぉ!」「生肉、食わせろ!、ガォ~ぉ!」という感じ。

もちろん、そういう人たちは、政府の生肉食の規制方針(衛生基準の強化)には大反対らしい。

おもしろいのは、そのほとんどが20~30歳代の男性ということだ。

これは食文化的に見て、とても興味深い現象だと思う。

人間の先祖が火を使い始めたのは、おそらく原人段階、年代的には諸説あるがだいたい100万年前だと思われる。

たぶん、火の使用から程なくして、その火で狩猟で得た動物の肉を焼くことを覚えたのではないだろうか。

つまり、火を使った肉の加熱処理は、とても古い文化で、それが人間の食文化(調理)のスタートだと言ってもいい。

火で肉を焼くことで、肉のたんぱく質が変成し、消化・吸収が良くなり、結果、栄養状態が改善され、さらに大脳の発達に寄与した。
また細菌や寄生虫による健康への害が減って寿命も伸び、人口が増大したと思われる。

たぶん、原人段階でも、肉は生よりも焼いた方が、おいしいし、リスクが少ないというは、経験則的に知っていたのではないだろうか。

そう考えると、現代日本で、肉の生食に強い欲求をもつ人は、北京原人以前の、きわめて原始的な食文化状態へ戻ろうとしていることになる。

「先祖返り」にしても、約100万年も戻ったことになる。

こうした原始文化(プリミティブ)への回帰欲求としては、服飾・装身文化におけるタトゥーやピアッシングがよく知られているが、それと同様なものなのだろうか?

なぜ、食中毒や寄生虫病のリスクを冒してまで、それほど生肉を食べたがるのか?

「生肉を食べると精がつく」という説がある。

生肉を食べてれば、どんどん働けて、どんどんSexできるということだ。

どうも、生肉食欲求が20~30歳代の男性に強いのは、この言説と関係がありそうだ。

でも、実際には、生肉食は、たんぱく質の消化吸収が悪く、エネルギーの摂取効率的にはよろしくない。
実は、精はつきにくいのだ。

なのに「精がつく」と思われているのはなぜなのだろう?

原始的な血・肉の呪力への信仰なのだろうか?
それとも草食獣を狩ってその生肉を食らう肉食獣の力が乗り移るのだろうか?

ユッケを毎日食べている男性の精力(勃 起力・射 精量)を、そうでない同年代男性と比較した研究とかないだろうか?(← にゃいにゃい)

そもそも歴史的に、生肉食と精力をリンクさせる言説は、いつ頃出て来るのだろう?
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歌川広重の名所江戸百景シリーズの「びくにはし雪中」(この画は二代広重の補作)は、雪が降る寒い夜、「山くじら」(山鯨=獣肉=鹿・猪・熊)で精をつけた後、「びくに橋」(遠景に見えている)を渡って、比丘尼(尼さんの格好をした非公認のセックスワーカー)の所に繰りこむという行動の流れが読み見取れるという説もあるが・・・。

ただ、山くじら屋の獣肉はちゃんと焼くか煮込んであるはずで、生肉ではけっしてない。

「鰻を食って精をつける」という言説は、江戸時代後期にはある(平賀源内が作った)。
「牛鍋食って精をつける」という言説は(たぶん)明治時代にはあった(と思う。未確認)。
新吉原遊廓の大門前(土手通り)には「中江」という老舗の桜(馬肉)鍋屋さんがある(明治38年=1905年創業)。

でも、「生肉を食べると精がつく」という言説は、欧米ではともかく日本ではかなり新しいと思う。

う~ん、生肉食欲求については、いろいろわからないことが多い。
機会があったら、調べてみよう。


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